聖夜に舞い降りた灼熱のサンタクロース

過去の自分たちが重なったのだろう。今この瞬間、1番聞きたくなかった人の名前が耳に届いてしまった。途端に心臓が騒がしくなる。



「柄物の顔じゃないって言ってたけど、絶対似合うと思う。ストライプとか、幾何学模様とか。千鳥格子のジャケットとか着たらクラクラしちゃいそう〜」

「……付き合ってるんですか?」



胸騒ぎに耐えきれず、直球で問いかけてしまった。我に返り、目を丸くする彼女に慌てて頭を下げる。



「すみませんっ。実は、こないだ、デパートに2人でいるところを見かけて……」

「デパートって、ここのこと?」

「はい。すごく楽しそうにお話ししてらっしゃったので……」



声がどんどん小さくなっていく。

親しみやすいとはいえど、先輩相手に、とんだ無礼だった。誰だって自分の話を遮られたらいい気分しないのに。

再度謝ろうとすると、うふふっと上品な笑い声がして、恐る恐る顔を上げた。



「ないよ。ちょっと相談に乗ってただけ」

「相談……?」

「うん。内容は私からは言えないけど」



躊躇いなく、キッパリと断言した田尻さん。

だとすると、口止めされているのだろうか。いや、プライバシーに関わるから言えないだけなのかも……。



「でも安心して。れっきとした先輩と後輩の関係だから」

「え」

「不安にさせちゃってごめんね?」



手のひらを合わせた彼女が、いたずらっぽく首を傾げる。

魅惑的な表情で可愛らしい仕草をするその姿は、高貴な女神様ではなく、小悪魔そのものだった。