幸福を呼ぶ猫


「そう、だよね…」
僕は彼女の反対を押し切ってまで自分の意思を貫き通すことが出来なかった。

彼女は画家になることに否定的だろうとは思っていた。だけど、いざ反対されると想像していたよりずっと突き放された気分になった。

はじめて出逢ったあの日、「素敵な絵ね」と言ってくれた彼女ならもしかして応援してくれるんじゃないかと何処かで期待していたのだろう。

その後美術館を出て、彼女が行きたがってたカフェに行ってお茶をしたけど僕は一刻も早く家に帰りたくてしょうがなかった。

彼女は僕を説得するかのようにひたすら教員か一般企業に勤めるべきだと僕に言い聞かせた。
僕はうん、そうだねと相槌を打つだけだった。