幸福を呼ぶ猫


「画家になろうっていうか、なりたいなって…。迷ってるんだ。」

彼女の顔を見るのが怖くて僕は絵を見つめたまま答えた。

「でも、教員免許も取ったんでしょう?」

「うん。それは、まあね…」
教授に勧められるがまま教員免許は取っただけで、教員になりたいわけでは無い。

「教員になるべきよ。それか一般企業でも。私達ももう21なんだから、いつまでも夢ばかり見てられないのよ。」
彼女はそう画家になることを反対した。
親にも教授にも同じようなことを言われた。コンクールで入選すらしたことのない僕に画家なんて無理だと。

自分でも分かってる…だけど……

「それに画家にならなくたって絵は描けるでしょう?」
そうじゃないんだ…