幸福を呼ぶ猫


珍しく僕が言い切ると彼女は不服そうな顔をした。

「私は京介くんを心配して言ってるのよ。」
全く余計なお世話だよ。

でも、これから美術館に行く予定だし険悪な雰囲気のままここに居るのも迷惑になりそうだったから僕はこれ以上なにも言わないことにした。

「心配しないで大丈夫だよ。それよりも、そろそろ出ようか。」
そう言って、彼女の返事も聞かずに伝票を取ってお会計を済ませる。

いつもなら割り勘にしようと言って聞かない彼女は「ありがとう」と一言いって静かに僕に着いてきた。
美術館まではただ隣を歩くだけで何も話さなかった。

美術館に入ると僕は気持ちを切り替え、展示品に夢中になった。
すると彼女も少し肩の力が抜けたようだった。