顔は知っているけれど同じクラスになったことがなくて、名前まで覚えられていない子だ。


「私は橘亮子。海斗くんのことと健くんのことは、佳子から聞いたよ」


佳子というのは去年同じクラスだった3人組の内の1人だ。


最初から海斗たちのことを下の名前で呼んでいた女子生徒だ。


「わざわざありがとう」


なんとなく照れくさくて視線をそらせてしまう。


しかし3人はそんなこと気にしていない様子で、「じゃあ、またね!」と、元気に自分たちのクラスに戻っていく。


そんな姿を海斗はぼーっとして見つめていたのだった。


「なにぼーっとしてんの」


「うわっ!」


突然声をかけられたことで飛び跳ねて驚く海斗に、覚めた表情のメガネ女子がため息を吐き出した。


海斗と同じ5年3組の女子で、クラス1真面目な生徒だ。


最近よく話をするようになった。


「なんだ、お前か」