隣人が起こした事件から一ヶ月が経過していた。


最初の頃は黄色い規制テープが離れたり、監視する警察官が家の前に立っていたりして物々しい雰囲気が抜け切ることはなかった。


しかし一ヶ月経過した今はテープも取り払われて、警察官の姿も見なくなっていた。


一瞬世界を騒がした事件は、日々起こる出来事に飲まれて波打ち際の砂のように流されて消えた。


と言ってもそれはごく一般的な人にとっての話だった。


隣の家に暮らしているくるみからすればまだ一ヶ月しか経過していない。


隣の事件での犯人は父親。


そして被害者は母親と子供2人。


犯行後父親も家の中で自殺。


一家無理心中という言葉が脳裏をよぎる。


いくら隣に暮らしていたって、家族間のことはよくわからない。


何の問題もなく暮らしているように見えて、実は大きな問題を抱えていた可能性だった十分にある。


考え出すと気分が沈んできてしまい、くるみは左右に首を振って考えをかき消した。


それでも、あの時の物音や救急車、パトカーの音は生々しく記憶に刻み込まれたままだ。


日曜日の昼下がり。


そろそろ起きようかとベッドから身を起こしたとき、窓の外が騒がしいことに気がついた。