それでも、いざ育て始めてみるとわが子はわが子だった。


徐々に愛情がわき始めて、自分は父親なのだと理解が追いついてくる。


妻の方は生まれる前からこの子と生きてきたこともあり、生まれてからも代わらぬ愛情を注いでいた。


ただ、父方の両親だけは少しばかり辛らつだった。


「せっかく男の子が生まれたのに、あれじゃあねぇ」


「まぁいいさ。もうひとり生めばいいんだから、出来損ないは仕方ない」


出来損ない。


出産後一週間しか経過していない妻へ向けての言葉にさすがに怒りを感じた。


「母さんだって出産の苦しみを知っているだろう。なのに、どうしてそんなことが言えるんだ!」


両親を怒鳴りつけて、無理矢理追い返してやった。


「気にしなくていいからな。この子はこの子らしく生きていけばいいんだから」


力強く言いながらも、不安は確かに存在していた。


それはきっと妻も同じだったはずだ。


この子は無事に育ってくれるんだろうか。


他に病気はないだろうか。


大人になったら、どうなるのかろうか。


期待よりも、不安のほうが大きいくらいだった。


妻の腕にだかれてすやすやと眠るわが子は、本当に愛らしかった。