私と椿くんの声が重なる。

いつの間にいたの?


「それ俺のだって!」

「うまいうまい、で、俺は何したらいい?」


ゴックン、と飲み込んで一言。

しれーっと言う刹那くんは、シャワーを浴びてきたのか髪が濡れている。

髪の毛が濡れた刹那くんは眩暈がしそうなほどかっこよくて。

ほのぼのしていた空気からは一転、全身に血が駆け巡る。

……私いま、真っ赤になっちゃってないかな。

だって、ドキドキしてるんだもん。
ほんと、私の体は正直だ。


「おーい、お前あとから来たくせにいいとこだけ持ってくんなよー。あーあ、寧々ちゃんに食べさせてもらえるとこだったのに」

「お前に食わせてたまるかよ」


ええとぉ。
目の前で繰り広げられるやり取りに、心臓はもう大あばれ。


……ふふっ。

だけど、こんな日常が、今の私にはすごく幸せ。

選挙に勝てる気は全然しないから、ここでの生活もきっとあと少しだ。

そう思うと、すごくさびしくなった。