「あっ……」


ふと、彼の目線が私の頭上に流れて。そのまま手が伸びてくるから思わずビクッと肩をすくめた。

髪の毛に触れられている感触がする。


「……桜の花びらがついてたよ、ほら」


見せてくれたのは、薄紅色の桜の花びら。


「ほんとだ……」


さっきの風で舞った桜が校舎の中へ入って来たみたい。

絨毯の上にも、2,3枚の桜の花びらが落ちている。

刹那くんはそれを手のひらに乗せると、ふーっと優しく吹いた。

踊るようにしてゆっくり落下する花びら。

刹那くんのしぐさのひとつひとつが絵になって、くらくらしそう。