もはや亡霊に(すが)っているようなものだ。

 もしかしたら、金多くんも本当は分かっているのかもしれない。


 分かっていても、その考えに縋っている。

 わたしを手に入れて、それでも母親を重ねているキョウに見てもらえなければ諦めも付くのかもしれない。

 でも、わたしがシロガネ以外の人のものになるなんてありえない。


 だから、やっぱりやれることは1つだ。


 キョウを消すしかない。

 それ以外に、金多くんを諦めさせることは出来そうにない。


 シロガネや優姫さんが言っていた意味が分かった。

 これは確かに、それ以外に方法がない。

 そしてキョウを消しさえすれば、きっと金多くんは“母親”を諦めて彼の大切な人である優姫さんだけを見ることが出来る。


 心残りは出来るかも知れないけれど、それでもこれだけ優姫さんを想っているんだ。

 2人で幸せになる道を見つけていけると思う。


「わたしは、シロガネのそばから離れないよ」

 わたしは最後にそれだけを告げて、校舎の方へと1人戻った。


 途中で一度振り返り、木々の上に見える時計塔を見つめる。

 あそこに存在するものを、何が何でも消さなくてはならない。

 そう決意するように……。