そこにはサトコが座っていて、「頑張れアサミ!」と、拍手をしながら声をかけてくれている。


「サトコ……」


「アサミならきっと大丈夫だよ!」


今までずっと一緒に練習してきたサトコ。


「でも……」


きっとみんなを失望させてしまうことになる。


「大丈夫。自分を信じて」


サトコが手を伸ばして来てアサミの頭を撫でた。


子供にするようなそれに少し恥ずかしくなったけれど、手のひらの暖かさに心が穏やかになっていくのを感じる。


「最初から諦めるんじゃなくて、ちゃんとチャレンジして諦めなよ」


その言葉に小さく頷く。


ニナの演奏を聞いた今、本当はここから逃げ出してしまいたい。


でもそうすれば、ソロパートはニナに決定してしまう。


アサミは下唇を噛み締めて立ち上がった。


緊張で手足が震える。


みんなの視線が突き刺さって、思わず目を閉じてしまいそうになる。


それでもステージへと上がり大きく深呼吸をした。


「ではお願いします」


先生の言葉を合図に、アサミは演奏をはじめた……。