「はじめまして。私は景子です。よろしくお願いします」


私の手を握りしめたまま丁寧に自己紹介をする少女。


その声はクラスメートの誰のものとも似ていなかった。


まるで機械的な、そう、決められたプログラムのような話し方だ。


「やめろよ景子。その子怖がってる」


景子と名乗った子の後ろから男子生徒が顔をのぞかせた。


男子生徒の髪の毛は金髪で、口にピアスをつけているのがわかった。


声は怒っているようで大きくて、自然と身構えてしまう。


「君はA組の矢沢さんだよね? うちのクラスになにか用事?」


先生が穏やかな声で質問してくる。


私は左右に首を振った。


「いえ、ただ、偶然ここを見つけて、なにをしているのかなって、思って」


「でもお前今は授業中だろ? なんでこんなところにいるんだよ」


男子生徒がズバリ質問してくるので「それは、えっと」と、口ごもってしまう。


素直に話すべきなんだろうけれど、うまくいかない。


「興味があるなら、少し一緒に勉強してみる?」


先生からの提案に私は目を見開いた。


「え、でも私は」


「遠慮しない遠慮しない」


私は女子生徒と先生に促されるようにして、特別学級に足を踏み入れたのだった。