甘い毒に溺れ堕ちて

間髪を入れず、次々に指示が飛んでくる。


……今日は一段と険しい顔してるな。いちいち言われなくてもわかってるよ。毎日のことなんだから。

焦るのはわかるけど、私は時間通りに起きてきたんだから、そんな言い方しないでほしい。


心の中で反抗しつつも食材を作業台に置き、リビングのカーテンを開けた。

新聞を取りに行った足で2階に向かい、プレートが下げられたドアをノックする。



風斗(ふうと)、起きてる?」

「起きてる」



いかにも不機嫌そうな声色でオウム返しされた。

耳を澄ますと、物音に交じって衣装ケースを開け閉めする音が聞こえる。どうやら着替えの最中だったようだ。


弟の起床が確認できたところで1階に戻り、最後は最年少組を起こす。



「はるー、はづー、起きてるー?」



数秒待ってみたものの、反応なし。「入るよー」と声をかけて襖を開ける。



「ほらっ、起きて。朝だよ」