甘い毒に溺れ堕ちて

身に覚えがありすぎる。

彼の立場になって考えると、どれも距離を置きたくなるような仕打ちだ……。



「やっぱり怒ってるよね。私に冷たくされたショックで具合悪くしちゃったのかな……」

「もー! まあちゃんってばマイナスに考えすぎ!」



ネガティブ思考にとらわれる私の背中を、茉耶がバシッと叩く。



「多少ムカッとはしたとしても、挨拶はしてくれてるんだから! まだ希望はあるよ!」

「そうなのかな……」

「調子が悪そうなのも、単に雨続きでうんざりしてるだけなのかもしれないよ? 私も梅雨の時期はだるくて朝起きられなかったもん」



自身の経験を例に出す茉耶に、そういえば6月は休みがちだったなと思い出す。



「学校だと難しいだろうから、電話かメッセージで聞いてみたら? テスト前だからすぐには返ってこなくても、モヤモヤしたままだと勉強も集中しづらいと思うし」

「……そうだね」



ゆっくりと顔を上げ、決意を固める。


それもそうだ。怒り心頭なら、挨拶どころか目さえも合わせないと思う。


憶測はしても、決めつけるのは良くない。

タバコ疑惑の時みたいに、予想とはかけ離れた理由が隠されているのかもしれないのだから。


茉耶から叱咤激励を受け、藍くんと向き合うことを決めた。