甘い毒に溺れ堕ちて

ダメだ。これ以上張り合っても手に負えない。

プイッとそっぽを向いて、中断していた勉強を再開する。


しかし、それは肩にズシッと乗った頭の重みで阻止された。



「ねぇ、重いんだけど」

「うん」

「いや、うんじゃなくて。ここ図書室だから」

「大丈夫。ここ死角になってるから」



私の肩に頭を乗せたまま、レシピ本を読み始めた藍くん。

後ろに本棚があるから他の人には見えづらいよという意味なのだろうか。

膝枕に比べたら、気恥ずかしさはだいぶマシだけれども……。



「勉強しないの?」

「す、するよっ」



チラリと斜め下を見たら、上目遣いで見つめる黒い瞳と視線がぶつかった。



「ねぇ、真彩ちゃん」

「な、何」

「呼んだだけ」

「……」

「うそうそ。お手本みたいな綺麗な字だね」

「……それはどうもありがとう」



勝手に覗かないでよ。レシピ本を見なさい、レシピ本を。

鉛筆を握りしめ、自習ノートに今日習った部分を書き写す。


さっき反応が可愛すぎて心臓もたないって褒めてた(?)けどさ。

私のほうが心臓が何個あっても足りないくらいだよ……っ。


雨足はなかなか弱まらず、結果、小一時間ほど滞在。

藍くんはというと、そのまま私の肩で眠ってしまい……。



「……人の肩で居眠りするほうが悪いんだからね」



散々からかってきた仕返しに、こっそり寝顔の写真を撮ってあげた。