甘い毒に溺れ堕ちて

生徒たちの整った頭髪を眺めていると、後方から私の名を呼ぶ声が聞こえた。

近づいてくる軽快な足音に1度立ち止まり、振り向いて声の主を確認する。



「おはようっ」

「おはよう、(らん)くん。今日は早いんだね」

「初日から遅刻するわけにはいかないからねー。スマホと時計、両方とも最大にセットして寝たから一発で起きた!」

「耳は大丈夫なの?」

「大丈夫! ワンコール目で起きたから!」



穏やかな風が吹き、彼の前髪がふわりと揺れる。


シャツは第1ボタンまでぴっしり。ネクタイも緩みなし。

上から下まで規則正しく着こなしているけれど……髪色だけは、従順とは正反対。



「真彩ちゃんがモーニングコールしてくれたら、その日何があっても頑張れそうな気がする」

「はいはいそうですか」

「あぁでも、ずっと聞いてたくて逆に寝坊しちゃうかも」

「仮にしたとしても、私のせいにしないでね?」



登校早々、本人の前で妄想を語り始めた。冗談だとわかってはいつつも、一旦話題を逸らすために釘を差す。


明るくまばゆい金髪の彼と、何の変哲もない地味な黒髪の私。


傍から見たらまるで水と油のようだが──私はこの彼に、1年生の頃から懐かれている。