とにかく目の前でのイジメはなくなったみたいだと、教室全体が安堵したときだった。


なんの前触れもなく3人が持っていたチョークを口に入れ始めたのだ。


それを前歯で噛み砕き飲み込んでいく。


最初はみんななにかの冗談だと思っていた。


チョークの形をしたお菓子でも持っていたのだろうと。


だけどそれが違うと感じ始めたのは3人が泣きながらチョークを口に運び始めたからだった。


チョークが喉に張り付いて激しくむせながらも、食べるのを止めない3人。


チョークのカスがボロボロと足元に散らばっていく。


私は笑いだしてしまいそうになるのを必死で我慢して、その様子もこっそり動画に収めることにした。


3人が気が狂っている様子なんてそうそう見られるものじゃない。


「おい、どうしたんだよ」


さすがに男子の1人が声をかける。


しかし3人共食べる手を止めない。


それなのに苦しそうに顔を歪めて泣いているのだから、その光景は恐怖としか言いようがなかった。


「と、止めて……!」


真純が呻くように助けを求めるが、男子生徒が気味悪そうな表情を浮かべて後ずさりをする。


「ちょっと、先生呼んだほうがいいんじゃない?」


3人共ほとんどのチョークを食べてしまった頃、ようやく誰かがそう言ったのだった。