こんなことで時間を使っていたらまた起こられてしまう。


早く帰らなきゃ。


気持ちは焦るものの、足はなかなか階段を下りようとしない。


視線は灰色のドアに釘付けになり、噂で聞いた仮面のことを思い出していた。


どんな犯罪でもプロ級になれるという仮面。


もしそんな仮面が本当にあったら、自分はどんな犯罪に手を染めるだろう?


考えて、昨日できなかったことを思い出す。


トイレに準備したトイレットペーパーはあの後水に流してしまった。


「放火の才能。なんてね」


クルミはクスッと笑い、ドアに手をかける。


鍵がかかっているものと思っていたそのドアはいとも簡単に開いてしまった。


少し拍子抜けしながら屋上へと出てみると、刺すような日差しに目を細めた。


8月に入るともっともっと暑くなるのだろう。


クルミは夏休みとなると毎日勉強に明け暮れなければならないが、クラスメートたちは海だ山だと遊びにいき、よく日焼けをして新学期を迎えるに違いない。


羨ましさに下唇をかみ締めたとき、光を反射しているものが落ちていることに気がついた。


クルミはまるで引き寄せられるようにそちらへ足を向ける。