「当然! やられてばかりじゃなくてちゃんと(あお)らないとね」

 主犯格をおびき出すには舐められてると思わせるのも一つの手だし。


「俺も出来る限り調べておくよ。伝手がほとんどないからどうなるか分からないけどな」

 なんて謙遜しているけれど、奏は昨日のうちにしのぶ経由で渡辺さんとかの繋がりを得ているはずだ。

 そこからどこまで伝手を広げられたかは分からないけれど。


 まあ、どっちにしろ今までとは違って伝手を探すところから始めなきゃないから時間はかかるだろうな。


「うん、期待しすぎない程度に期待しておくよ」

「はは、頑張るよ」

「じゃああたし机の方も見なきゃないから先行くね」

「おう、美来も頑張れよ」

 そんな会話を軽く交わし、あたしは二階へと階段を駆け上がった。



 そして自分の机の上を見てポツリとこぼす。

「……こう来たか」

 今日はびっちょびちょに濡れた雑巾だった。

 しかも机の上だけじゃなくて椅子もしっかり濡れている。


 匂いを嗅いでみると、使い古された雑巾の独特の臭さがあった。

「まあ、まだましな方かな?」

 知ってる中で一番嫌だなぁって思った雑巾のパターンは、雑巾に牛乳をしみ込ませてひと月ほど放置したものをいじめの対象に投げたり、こういう机なんかに置いたりすることだ。

 いじめが本格的に始まったのは昨日だからそんなの用意出来るわけがないんだけどね。