え、そうなの?
ってことは絃ちゃん騙されてたってこと?

俺だってそんなの簡単に調べられたけど、何せ絃ちゃんは頑なに今回の社名は教えてくれなかったから。


それに1人で色々やりたいって頑張ってたから、黙って応援するのも親友の役目かなって。



「だからそいつは要らない。そして、天鬼と佐伯に文句がある輩は去っていいぞ。こちらも今後一切支援はしないがな」



断言しちゃったし。

もちろん佐伯からも見放されると思っていなかった企業側は、顔に焦りを浮かべ始めた。


そもそも天鬼がいるから佐伯も成り立ってる節もあって、結局企業側も支援が途絶えたらリスクしか無いってのに。



「うちの者が無礼な真似をしたことは謝る」



そんな中、再び絃織さんの声が響いた。

きっと謝りたくないんだろうけど形上そうしてるんだろう。



「だが、俺が天鬼組の頭であり“那岐”であることには変わりない。
俺に不満があるなら去られても当然だと思ってるが───」



嬉しそうな顔をしていると思った。

まぁ確かにあんなにも必死に守ってくれちゃあね、ちょっと羨ましいかもって俺も思っちゃったし。



「俺は今まで通り世話になってる企業とは続けたいと思っている」



俺は施設に引き取られてから色んな事情で“那岐”から“天道”に変わったけど、この人はずっと“那岐”のままだった。

それは、ずっと罪を背負うためなんだろうなって。


その上で光を見つけて生きようとしている絃織さんは、何よりも格好よく見えた。


いつかに俺はこの人をずっと恨みつづけて、そんな光を殺そうとしたのに。

それなのに、この男も俺を責めないから。



「優しいがすぎるんだよね、あんたらって本当に」



だから俺もまた、彼の隣に立った。

困惑の表情を浮かべる全員へと放つように息をスッと吸って。