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この日、樹里は一樹の行動を監視することで精一杯で、あたしをイジメる暇はなかった。


そのことが原因か、クラスメートたちからの攻撃を受けることも少なかった。


時折陰口を叩かれる程度で、平和な1日が過ぎていく。


お弁当を食べて眠気と戦っているときだった。


突然教室内に怒号が聞こえてきていた。


「バカな真似してんじゃねぇよ!」


それは一樹の怒号で、あたしの眠気は一瞬にして消え去っていた。


目を見開いて一樹へ視線を向けると、近くに泣いている樹里の姿があってまた驚いた。


あの樹里がボロボロと涙をこぼして泣いているのだ。


信じられない光景だった。


一樹は樹里の前で仁王立ちをして、顔を真っ赤にして怒っている。


しかし、視線は樹里の横の壁へと向かっていた。


「ご、ごめんなさい!」


樹里は必死に謝っているが、一樹は聞き入れない。


「休憩のたびにこそこそ俺のあとついてきやがって! 蕾から聞いたぞ、俺のことを監視してるんだってな!」


その言葉に樹里が蕾へ視線を向けた。


蕾は後ずさりをして、左右に首を振っている。


それを見ている重行はどちらが優勢なのか瞬時に判断して、一樹の後ろについていた。