「じゃあ、ひとつめのお願いなんだけど……今すぐ樹里を振ってきて」


あたしはクラス中に聞こえる声でそう言ったのだ。


クラス内が一瞬静まりかえる。


樹里が目を見開いて一樹を見つめている。


「あぁ」


一樹は短くうなづいて、樹里の前に立った。


「え、なに? 嘘でしょう?」


樹里は混乱しながらキョロキョロと周囲を見回している。


しかし、樹里を助けるクラスメートはもういない。


重行と蕾でさて、見てみぬふりをしている。


力で無理矢理手に入れた友人関係なんて、所詮その程度のものなのだ。


「樹里、俺と別れろ」


一樹の声に樹里の顔が青ざめた。


「な、なに言ってんの?」


樹里の声が震える。


前田さんが教えてくれた情報によれば、樹里は一樹と付き合うことで性格が変わったと言っていた。


その一樹が自分離れようとしているのだ。


樹里からすれば、それはクラスカーストの転落を意味している。