物語の世界なら、不幸な少女に手を差し伸べる人が現れる。


だから不幸な少女は現状から抜け出し、変わることができるのだ。


でも、現実世界は違う。


不幸な少女に手を差し伸べる人なんて誰もいない。


みんなが嫌われ者からは距離を取り、人気者の周りに集まっていくから。


もしも私の人生が物語ならば、私に手を差し伸べて、助けてくれる優しい人を付け加えてもらうのに。


それで私は陰キャ眼鏡の杉田忍から抜け出して、普通の女子中学生に生まれ変わるのに。


物語の主人公になりたいとか、そんな贅沢を私は言わない。


本当に普通でいいのだ。


普通になれれば幸せなのだ。