「ただいま〜」

「おかえ……り……?」



ドアを開けた途端、司の動きがピタッと止まった。


丸く見開かれた目、半開きの口。

手元に至っては、切り分ける途中だったであろう、ホワイトチョコ味のドーナツにフォークが刺さったまま。


こんなに驚いてるの……大学受験合格のお祝いにサプライズで家におしかけた時以来だ。



「それ……もしかして、昨日帰った時に?」

「うん。片づけてたら見つけたの」



全身を見せつけるように、その場でくるっと回ってみせた。


私が着たのは、赤いスカーフが特徴的な紺色のセーラー服。

昨日、母と2人で押入れを整理している最中、中学時代の制服や教科書が入った半透明の衣装ケースを見つけたのだ。



「どう? いける?」

「……ギリ、いけるかな」

「本当⁉ 着てよかったぁ」



ホッとしつつ、動揺する司の目の前で腰を下ろす。



「やけに静かだなと思ったら、着替えてたのか。なんで持ってきたの?」

「さっきみたいにまた懐かしくなって。これ着てバレンタインのラッピング買いに行ったの思い出してさ」