「大丈夫! 短時間でも貸し出し可能みたいだから! 割引券もあるし!」



財布から券を取り出して渡す。


名刺のように程よい厚みのあるこの券は、数日前の女子会で豊香がみんなに配ったもの。

豊香いわく、浴室がガラス張りで、なんと湯船はジェットバス付きなんだとか。


人目につかず、静かで、誰にも邪魔されない個室。

キスやハグといった、スキンシップを取るには絶好の場所。


今回はお風呂には入らないけど……デザートを食べながら夜景を眺めて、ロマンティックな雰囲気になって、そのままキス……できたらいいなぁ。



「どう……かな?」

「ダメ。終電なくなったら困るだろ? せっかく行くならもう少し時間に余裕がある時じゃないと。だから……ごめん」



きっぱりと断った司から謝罪の言葉と共に、券と冊子が返ってきた。

ついさっきまで興味津々だったのに……いつの間にかデフォルトの鉄仮面に戻っている。