問題はアリーシャの振りをしてくれる女性だったが、これはセシリアにお願いすることにした。
セシリアは僅かだが、シュタルクヘルト語が話せた。
セシリアの母親は、シュタルクヘルトからやってきた移民三世であった。
セシリア自身もシュタルクヘルトからやってきた祖母からシュタルクヘルト語を習ったらしい。
オルキデアやアリーシャほど、流暢には話せないが、多少は話せる。
また、セシリアなら軍部に所属するクシャースラの妻として、軍部への出入りが可能である。
クシャースラが付き添えば、夫の付き添いとして、セシリアが軍部に入っても怪しまれない。
オルキデアにとって幼少期から付き合いのあるセシリアを危険に晒すのは心苦しいが、時間が無かった。
セシリア本人も快く計画に承諾し、クシャースラも承諾してくれたのだった。
セシリアにはこれからアリーシャの振りをして、オルキデアと共に軍部を出て、実際に郊外の軍医病院に向かう。
病院には既にオルキデアが馴染みの医者に頼み、セシリアの着替えを預かってもらい、口裏を合わせるように依頼している。
アリーシャの振りをしたセシリアは、オルキデアが付き添って病院に送り届ける。
先にオルキデアは病院の外に出て、離れた場所で別の車に乗って待機する。
一方、セシリアは預かってもらっていた別の服に着替え、見舞いを終えた見舞い客の振りをして、病院から出て来る、
そして、「たまたま」会ったオルキデアの車に同乗して、王都に戻ってくることになる。
アリーシャにはセシリアの振りをして、クシャースラと一緒に軍部から出る。
軍部に入る時、目立つようにセシリアには被っていた帽子を脱いで、わざと顔を見せて警備に印象づけてもらった。
そうすれば、クシャースラと一緒に入った女性はセシリアだと警備に覚えてもらえる。
同じ服を着て、同じ帽子を被ったアリーシャに入れ替わっていても、セシリアだと思われているなら、顔が見えなくても確認をされないだろう。
その後、アリーシャには帽子で顔を見られないように、セシリアの振りをして軍部の外に出てもらう。
それから道を遠回りして、移送先に向かう。
オルキデアたちが戻るまで、そこで待機してもらうつもりだった。
「オルキデア。そろそろ」
「そうだな。先に俺とセシリアが外に出る。二人はしばらくしてからここを出てくれ」
アリーシャの移送先より、郊外の病院の方が遠い。
先にここを出なければ、今日中に王都に帰って来れない。
「分かりました。オーキッド様」
「では、これを」
そうして、オルキデアは執務机の引き出しに隠していた「ある物」が入ったカバンを取り出す。
受け取ったセシリアがカバンを開けると、先日オルキデアが外で買ってきた「ある物」ーー藤色の髪が出てきたのだった。
「セシリア、手伝うよ」
「まあ、ありがとうございます。クシャ様」
セシリアはクシャースラに手伝ってもらいながら、腰まである藤色のロングヘアーのウィッグを身につけたのだった。
「どうですか？ オーキッド様、クシャ様」
「大丈夫だ」
「紫もよく似合うよ。セシリア」
セシリアは呆気に取られていたアリーシャに視線を向けると、「アリーシャさんは？」と優しく訊ねる。
「アリーシャさんに近いですか？」
「あ……。はい、近いと思います……」
セシリアは僅かだが、シュタルクヘルト語が話せた。
セシリアの母親は、シュタルクヘルトからやってきた移民三世であった。
セシリア自身もシュタルクヘルトからやってきた祖母からシュタルクヘルト語を習ったらしい。
オルキデアやアリーシャほど、流暢には話せないが、多少は話せる。
また、セシリアなら軍部に所属するクシャースラの妻として、軍部への出入りが可能である。
クシャースラが付き添えば、夫の付き添いとして、セシリアが軍部に入っても怪しまれない。
オルキデアにとって幼少期から付き合いのあるセシリアを危険に晒すのは心苦しいが、時間が無かった。
セシリア本人も快く計画に承諾し、クシャースラも承諾してくれたのだった。
セシリアにはこれからアリーシャの振りをして、オルキデアと共に軍部を出て、実際に郊外の軍医病院に向かう。
病院には既にオルキデアが馴染みの医者に頼み、セシリアの着替えを預かってもらい、口裏を合わせるように依頼している。
アリーシャの振りをしたセシリアは、オルキデアが付き添って病院に送り届ける。
先にオルキデアは病院の外に出て、離れた場所で別の車に乗って待機する。
一方、セシリアは預かってもらっていた別の服に着替え、見舞いを終えた見舞い客の振りをして、病院から出て来る、
そして、「たまたま」会ったオルキデアの車に同乗して、王都に戻ってくることになる。
アリーシャにはセシリアの振りをして、クシャースラと一緒に軍部から出る。
軍部に入る時、目立つようにセシリアには被っていた帽子を脱いで、わざと顔を見せて警備に印象づけてもらった。
そうすれば、クシャースラと一緒に入った女性はセシリアだと警備に覚えてもらえる。
同じ服を着て、同じ帽子を被ったアリーシャに入れ替わっていても、セシリアだと思われているなら、顔が見えなくても確認をされないだろう。
その後、アリーシャには帽子で顔を見られないように、セシリアの振りをして軍部の外に出てもらう。
それから道を遠回りして、移送先に向かう。
オルキデアたちが戻るまで、そこで待機してもらうつもりだった。
「オルキデア。そろそろ」
「そうだな。先に俺とセシリアが外に出る。二人はしばらくしてからここを出てくれ」
アリーシャの移送先より、郊外の病院の方が遠い。
先にここを出なければ、今日中に王都に帰って来れない。
「分かりました。オーキッド様」
「では、これを」
そうして、オルキデアは執務机の引き出しに隠していた「ある物」が入ったカバンを取り出す。
受け取ったセシリアがカバンを開けると、先日オルキデアが外で買ってきた「ある物」ーー藤色の髪が出てきたのだった。
「セシリア、手伝うよ」
「まあ、ありがとうございます。クシャ様」
セシリアはクシャースラに手伝ってもらいながら、腰まである藤色のロングヘアーのウィッグを身につけたのだった。
「どうですか？ オーキッド様、クシャ様」
「大丈夫だ」
「紫もよく似合うよ。セシリア」
セシリアは呆気に取られていたアリーシャに視線を向けると、「アリーシャさんは？」と優しく訊ねる。
「アリーシャさんに近いですか？」
「あ……。はい、近いと思います……」
