「産まれたばかりのオーキッドをエラフに預けたのは悪かったわ。でもね。私にも私の都合があったのよ」
「都合って……父上以外の男との約束でしょう? 父上がどれほど苦労をしたのか、母上はご存知ですか?」
まだ乳飲み子であったオルキデアを抱えた父のエラフは、仕事と育児で相当の苦労をしただろう。
使用人やコーンウォール家の力を借りられたからまだ良かった。
もし、借りられなかったら、今頃オルキデア共々、親子で破滅の道に進んでいただろう。
「それだけじゃありません。我が家の財産を使って、勝手に借金を肩代わりして、財産を食い尽くそうとしました。
それに父上も、俺も、どれだけ苦労をした事か……」
「私が肩代わりしただけじゃないのよ。相手が勝手に私の名前を使って、借金を増やしたのよ」
エラフの死後も、ティシュトリアは借金を増やし続けた。
その返済の為に、オルキデアはほぼ休みなく働かなければならず、戦勝での報奨金まで借金の返済に当てたのだった。
ーーその代わり、二十代後半にして、少将にまで昇進出来たが。
「どうせ、母上が自ら申し出たのでしょう? 自分の名前を使って、借金をすればいい、と」
今では、ティシュトリアの名義で借金が出来ないように、オルキデアは各所と手続きを交わしている。
手続きと言っても、ティシュトリアの名義で作ったカードや銀行口座の利用と、新しくカードや口座が開設出来ないように全て停止させただけだが。
その結果、今では借金は無くなり、オルキデアも返済から解放されたのだった。
この手続きも、コーンウォール家に手伝ってもらった。
ティシュトリアの生家である伯爵家にも相談したが、ティシュトリアの男遊びの噂は生家にも及んでいるようで、代替わりした伯爵家の当主ーーティシュトリアの兄にして、オルキデアの伯父、には、ほとんど相手にされなかった。
代わりにと言えばいいのか、相当な金額が書かれた小切手を渡されたーー手切れ金と言う事だろう。
実際に、それも借金返済に役立てたので、文句は言えなかった。
結局、実施的な手続きは、コーンウォール家が主体となってやってくれた。
オルキデアが戦場に行ってる間に、ほぼ全ての手続きを済ませてくれたのだった。
いつまでも、セシリアとその両親には頭が上がらなかった。
「とにかく。俺は結婚する気はありません。これを持って帰って下さい」
テーブルに広げていた書類と写真を集めると、母親に押しつける。
「どうして、オーキッド? 相手は伯爵よ。悪い話ではないと思うの」
「そうやって、ランタナ伯爵の孫娘と結婚させて、ラナンキュラス家を吸収したランタナ伯爵家を食い物にするんですね」
ティシュトリアの魂胆は見えている。
書類によると、ランタナ伯爵家には孫娘のティファを除いて後継者がいなかった。
ティファと結婚した場合、オルキデアはランタナ伯爵家に入る事になる。
兄がいたティシュトリアの生家や名ばかり貴族であるラナンキュラス家と違って、ランタナ伯爵家にはティファしか後継者がいない。ランタナ伯爵家は、ラナンキュラス家を吸収して、伯爵家の存続を優先させる筈だ。
オルキデアがランタナ伯爵家に入ってしまえば、ティシュトリアはティファの義母となる。更に、オルキデアとティファの間に子供が出来れば、祖母となる。
孫を理由に、ランタナ伯爵家の財産を使える事になるだろう。
それが、ティシュトリアの狙いだと考えられる。
「都合って……父上以外の男との約束でしょう? 父上がどれほど苦労をしたのか、母上はご存知ですか?」
まだ乳飲み子であったオルキデアを抱えた父のエラフは、仕事と育児で相当の苦労をしただろう。
使用人やコーンウォール家の力を借りられたからまだ良かった。
もし、借りられなかったら、今頃オルキデア共々、親子で破滅の道に進んでいただろう。
「それだけじゃありません。我が家の財産を使って、勝手に借金を肩代わりして、財産を食い尽くそうとしました。
それに父上も、俺も、どれだけ苦労をした事か……」
「私が肩代わりしただけじゃないのよ。相手が勝手に私の名前を使って、借金を増やしたのよ」
エラフの死後も、ティシュトリアは借金を増やし続けた。
その返済の為に、オルキデアはほぼ休みなく働かなければならず、戦勝での報奨金まで借金の返済に当てたのだった。
ーーその代わり、二十代後半にして、少将にまで昇進出来たが。
「どうせ、母上が自ら申し出たのでしょう? 自分の名前を使って、借金をすればいい、と」
今では、ティシュトリアの名義で借金が出来ないように、オルキデアは各所と手続きを交わしている。
手続きと言っても、ティシュトリアの名義で作ったカードや銀行口座の利用と、新しくカードや口座が開設出来ないように全て停止させただけだが。
その結果、今では借金は無くなり、オルキデアも返済から解放されたのだった。
この手続きも、コーンウォール家に手伝ってもらった。
ティシュトリアの生家である伯爵家にも相談したが、ティシュトリアの男遊びの噂は生家にも及んでいるようで、代替わりした伯爵家の当主ーーティシュトリアの兄にして、オルキデアの伯父、には、ほとんど相手にされなかった。
代わりにと言えばいいのか、相当な金額が書かれた小切手を渡されたーー手切れ金と言う事だろう。
実際に、それも借金返済に役立てたので、文句は言えなかった。
結局、実施的な手続きは、コーンウォール家が主体となってやってくれた。
オルキデアが戦場に行ってる間に、ほぼ全ての手続きを済ませてくれたのだった。
いつまでも、セシリアとその両親には頭が上がらなかった。
「とにかく。俺は結婚する気はありません。これを持って帰って下さい」
テーブルに広げていた書類と写真を集めると、母親に押しつける。
「どうして、オーキッド? 相手は伯爵よ。悪い話ではないと思うの」
「そうやって、ランタナ伯爵の孫娘と結婚させて、ラナンキュラス家を吸収したランタナ伯爵家を食い物にするんですね」
ティシュトリアの魂胆は見えている。
書類によると、ランタナ伯爵家には孫娘のティファを除いて後継者がいなかった。
ティファと結婚した場合、オルキデアはランタナ伯爵家に入る事になる。
兄がいたティシュトリアの生家や名ばかり貴族であるラナンキュラス家と違って、ランタナ伯爵家にはティファしか後継者がいない。ランタナ伯爵家は、ラナンキュラス家を吸収して、伯爵家の存続を優先させる筈だ。
オルキデアがランタナ伯爵家に入ってしまえば、ティシュトリアはティファの義母となる。更に、オルキデアとティファの間に子供が出来れば、祖母となる。
孫を理由に、ランタナ伯爵家の財産を使える事になるだろう。
それが、ティシュトリアの狙いだと考えられる。



