「ねぇ、咲良。

今日、一緒に本屋さんに寄っていこうよ。

どうしても欲しいマンガかあってさ」


「ごめん。

今日はダメだよ。

居残りで水彩画を仕上げなくちゃ、美術の松本先生に怒られるから」


「あっ、そうか。

残念だな。

それじゃ、一人で本屋に行くよ」


「優子が欲しいマンガって、どんなマンガ?」


「タイプの違うイケメン三人から交際を求められて、気持ちがブレまくっている女子高生のお話だよ。

主人公の内気で優柔不断なとこがすごく好きなの。

咲良も読んでみる?」


「あっ、読みたい!

優子のオススメにハズレなしだもんね」


「それじゃ、明日、学校に持ってくるね」


「ありがとう。

期待してるね」


私は笑いながらそう言って、優子と別れた。


本当は優子と一緒に本屋に行きたかったけど、今日中に水彩画を仕上げないと、松本先生に怒られてしまう。


私はなるべく早く絵を仕上げて帰ろうと思っていた。


私の他にも二人、美術室で居残りをするけど、その人達は私と仲が良い人ではなかったから。