「とりあえず、萩原さんは皓也がヴァンパイアで僕達がハンターだって事は理解したんだよね? それなら申し訳ないけど、強制的に協力者になってもらうよ?」

 少し考えて、わたしは少し不満顔で頷いた。


 理解はしても、全てに納得はしていない。
 とはいえ、だからといって何も無かった事にして欲しいと言われても出来るわけがない。

 強制的にって所が引っかかるけど、関係ないと言って遠ざけられるよりは良いと思った。


「詳しい説明は休みの日にしよう。土曜日予定はあるかい?」
「いいえ、特に予定は入っていないですけど……」

 説明は出来ればすぐにでもして欲しい。
 でも部活も終わって、それからまたしばらく時間が経った。
 まだ空は明るいけど、六時は過ぎてるだろう。
 あまり帰りが遅くなるのも、親に変な心配をさせてしまう。

 だから、仕方なく了承した。


「じゃあ土曜日に」
 と、安藤先生は決定する。
 そして笑顔を消し、真面目な顔になって続けた。

「それで今一番の問題なんだけど……。どうやら皓也くん、人間に戻れないみたいなんだ」
「……は?」

 戻れないってどういう……。

「戻れるかって聞いたら首を横に振ったから戻れないってことだろ」
 と、今まで黙っていた淳先輩が言う。

 犬の皓也を見ると、そうだと言う様に頷いている。
 どうやらこの姿の時は言葉は分かっても話せないみたいだ。

「この姿になったのも初めてみたいで、戻り方が分からないみたいなんだ。僕達も変身してしまうケースは初めて見るからアドバイスも出来ないし」

 そうだ。
 皓也はヴァンパイアなのに、どうして犬になっちゃったのか……。
 ヴァンパイアが変身するならコウモリなんじゃないの?

「ホント、何で狼になるんだろうな? 人狼じゃあるまいし」
「何らかの先祖返りだと思うんだけど……」

 犬じゃなくて本当の狼だったみたいだ。
 二人の会話を聞きながらそんなことを思った。


 皓也を見ると、その表情は悲しそうに見える。

 初めてこんな姿になって、しかも戻れないなんて……。
 きっと、ものすごく不安だよね。

 皓也の気持ちを考えると、何だかものすごく胸が締め付けられた。
 思わずギュッと抱き着くと、スリスリするように皓也の頭が動く。
 それがまた気持ちよくて、何だかわたしの方が(なぐさ)められているみたいだと思った。


「……あーイチャついてるとこ悪いんだけど、続きいいか?」
「!?」

 い、イチャついてる!!??


 淳先輩の言い様に驚いて皓也からバッと離れる。
 否定したかったけど、皓也の方が先に淳先輩を威嚇(いかく)するように(うな)った。

「だから悪いって言っただろ!?」
 必要以上に(おび)えた淳先輩は安藤先生の後ろに隠れてそう言う。
 やっぱりどこか残念な淳先輩だった。