出会いというものは突拍子もなくおとずれる。





「待てやごらぁ!」



後ろから蹴りとばされたゴミ箱が顔の横をかすり、びっくりしたわたしは足をもつらせた。



派手に転んでしまったけど、痛みは感じない。

感じているひまもなかった。



りんごの芯、開けられた袋とじ、

空のペットボトル、紙くずに本。


地面に散らばったゴミもそのままに、あわてて立ち上がる。




さっきより近く、すぐ後ろで声が聞こえた。

「殺す」とか「犯す」とか物騒な言葉。





たとえば、チンピラに追いかけられていたとする。



死にものぐるいで迷い込んだ先が、どうにもこうにも危なっかしい場所で。





「……なんだてめーら」


そこにいたのは、闇をも統べるドーモーな獅子だったとしたら。





「た、たすけてっ……!」

「はあ?」


無我夢中で助けを求めてしまったとしたら。




このとき出会っていなければ、わたしたちはどうなっていたのだろう。


そんなことは誰にもわからない。