一応、検索結果をひととおり見てみたけどそれらしき情報はいっさいない。



「ユキノさん、同姓同名にしてはって言ってましたよね」


この世界のどこかに少なくともひとり、“榛名灯里”という人物がいる。

まるで深く広い海原にわたしが、わたしの名前が沈んでいるんだ。


それは確実だった。


でも、小さくて細かい泡はすぐに消えてしまう。

すくない情報だけじゃ、その場所を特定することは難しい。




「スマホ、ありがとうございました」

「もういいのか?」


こくりとうなずく。




「……知らないほうがいいんでしょうか」


ずっと頭のなかに残ってたユキノさんの言葉。


真実を知らないほうが幸せだ、って。



たしかにその通りかもしれない。


知らないほうがいいことって、きっとこの世の中たくさんある。



ユキノさんはわたしの正体を知ってしまった。

それがよくないものだったから、わたしに言うことをためらっていたんだ。