病んでる僕と最強の勇者たち

(僕が指輪を奪われた貴族風の若い女性と話しているとき、この街の人たちは僕が盗賊から指輪を取り返してくれると信じていた。

みんなは僕に期待し過ぎだよ。

僕はヘタレな但野明彦。

本当は誰よりも弱い男なのに……)



僕は腰にぶら下げていた鞘に収まる細身の剣を静かに抜いた。



戦うことは怖いけど、僕はみんなの期待を背負っている。



僕にはひげ面の盗賊に勝つ自信なんて一ミリもないけど、それでも僕は戦わなくちゃ。



僕は最強の賢者だから……。



僕が細身の剣を抜き、戦う姿勢を見せると、ひげ面の盗賊は下品な笑みを浮かべて、うれしそうに僕を見ていた。



「おもしれぇじゃねぇか、チビ助。

このオレと勝負するつもりか?

オレは盗賊でもレベルは高いぜ。

オレに勝てると思ったら大間違いだ!」



ひげ面の盗賊はそう叫ぶと、こん棒を振りかざして僕に襲いかかってきた。



もう戦いを回避するのは不可能だ。



怖くても僕は戦わなくちゃ……。