病んでる僕と最強の勇者たち

(どうしよう。

この人、僕の話を聞いてくれない。

僕は最強の賢者なのに……)



僕には最強の賢者という肩書きはあるけれども、まだ戦闘を経験したことのない戦闘童貞だ。



そんな僕がいきなりこんなシビアな戦いをしなくちゃいけないなんてハード過ぎる。



僕はひげ面の盗賊の迫力に思わず足がすくんでいた。



「おい、チビ助。

オレが奪った指輪が欲しけりゃ、力ずくで奪いにこい!

オレは盗賊。

略奪のプロフェッショナルだ。

オレは他人から奪うことで、ずっと今まで生きてきたんだ」



盗賊さん、自分の悪を自慢気に語るなよと、僕は心の中で突っ込みを入れながら、ひげ面の盗賊と向かい合ってた。



このひげ面の盗賊から指輪を奪い返すために、ひげ面の盗賊との戦闘は避けられない。



僕は決断が迫られている戦闘か逃亡かの二択の中で、出会いの街で出会った街の人たちの顔を思い浮かべていた。