「何をするんですか?

その指輪は母からもらった大切な指輪で……」



「何をするって、決まってるだろ」



ひげ面の大男が、下品な笑みを浮かべながら、貴族風の若い女性にこう言った。



「盗賊のオレがあんたから指輪を奪ったんだ。

そしたらこの指輪はオレの物さ。

どっかで売りさばいて、酒場で上手い酒でも飲んでやるよ」



「待って下さい!」



貴族風の若い女性がそう言って、大切な指輪を返してもらおうとすると、ひげ面の盗賊は貴族風の若い女性を突飛ばし、下品な笑みを浮かべてこう言った。



「待って下さいと言われて、待ってやる盗賊がいるかよ。

盗賊は悪いヤツと決まっている。

オレと会っちまったあんたは、最高に運が悪いのさ」



ひげ面の盗賊はそう言って、高笑いをすると、貴族風の若い女性から奪った指輪を握りしめ、その場を立ち去った。



僕はその最悪の出来事の一部始終を見てしまった。



そして僕は道の片隅で倒れている女性の元にあたふたと駆け寄っていた。