「す、すごい……。

これが僕の魔法……。

これが最強の賢者の実力……」



僕はたった一撃で何十体ものモンスターを倒した自分の魔法に驚愕していた。



今までの僕は、最強の賢者というのは名ばかりで、自分は弱いと思い込んでいた。



でも、今放った魔法で僕は覚醒していた。



今の僕は、引きこもっていた部屋の中でアニメやゲームを見ながら憧れていたあの最強の賢者そのものだ。



ヘタレな僕とは対称的で、魔法も剣も使いこなせるオールマイティーな能力を持つ賢者。



僕の持つイメージでは勇者は血筋で、賢者は才能に優れたる者だ。



だから僕は勇者よりも賢者が好きだった。



何の取り柄もなく、才能の欠片もない但野明彦とは一番遠い場所にいる賢者に僕はなりたい。



たとえそれが、二次元の世界でも、足を踏み入れたことのない異世界でも……。



僕はずっと変わりたかっんだ。



僕が大嫌いだったヘタレの但野明彦から……。