無意識だった。あんなこと口走って。


でも、小春を誰かに取られるのがイヤだと思ってしまったんだ。


うちに居候して、情が湧いたからか?


美味いメシを作ってくれてるからか?


ちがう……それとはもっと違う何かが……。


喉の奥に何かが引っかかっているような気がして、すっきりしないんだ。


あーわかんねえっ。


俺は居心地が悪くなり、席を立った。


「……っ」


教室を出て行くのと入れ替わりに、誰かが入ってこようとしてぶつかりそうになる。


そいつはドアから教室の中をのぞきこんだ。


「小春ちゃん!」


……あ?


慣れ慣れしく小春の名前を呼ぶそいつは、あの生徒会副会長だった。


俺よりも背は低く、黒ぶちメガネをかけていて、ネクタイも首元まできっちりあげていて、いかにも生徒の模範を絵にかいたような男。