「はぁ……」


我姉ながら、ほんとにひどいと思う。


俺のトラウマが、一層深くなりそうだ。


「風呂入ってきなよ」


時計を見ればもう10時を回っていた。


こんな時間まで風呂にも入らず姉貴に拘束されていたかと思うと、申し訳ない。


「うん、でもキッチン片付けてからにするね」


そう言って、キッチンへ立つ小春。


俺はそのあとを追った。


「いいよ。俺がやっとくから」


スポンジを持ったその手を掴んだ。


小春はぴくっと肩を震わせて、そのまま俺を振り返る。


「……っ」


俺よりはるかに背の低い小春。上目遣いで俺を見る様な格好になる。


ドクンッ。


思いがけず接近した顔に、胸が鳴る。


小春は驚きに見張った目で、じっと俺のことを見ている。


「小春ってさ、」


「えっ……」


「好きなやつ、いんの?」