☆☆☆~美知佳サイド~

「その後、学校から出た咲子は課題を忘れてきてしまったことに気が付いて、1人で教室へ戻ったの。その時にエレベーター内で発作を起こして、そのまま……」


咲子さんのお母さんはそう言い、目じりに浮かんだ涙をぬぐった。


「その話は誰から聞いたんですか?」


あたしがすぐにそう質問した。


「友達の英子ちゃんよ。あの子とは1番仲が良かったから」


「そうなんですね……」


あたしは遺影の中でほほ笑む咲子さんを思い出した。


たしかにパッと人目を引くような美人だった。


でも、それと今回の出来事には関係がなさそうだ。


ただすごくモテていたというだけで。


「さっきの人が、咲子のファン第一号だったの」


お母さんの言葉にあたしは「え?」と、聞き返していた。


「さっきのスーツの子よ。前原君って言って、何度か咲子に告白したこともあるみたい」


お母さんの言葉にあたしと光弘は顔を見合わせた。


「それに、咲子が倒れたのを発見して通報してくれたのも前原君だったわ。彼は本当に優しい人でね……」


お母さんの声がどこか遠くに聞こえ始めた。