(私は晴江さんたちに紗栄子を無視するように言われて、紗栄子からの挨拶を聞こえないフリをして通りすぎた。

でも、まだあのときは紗栄子へのいじめが、あんなにもひどいものになるなんて想像もしていなかった。

紗栄子はどうしてあんなにも徹底的にいじめられたんだろう?

紗栄子は大人しくて、誰からも嫌われない人だったのに……)



紗栄子が自殺したと聞いたとき、梨華は自分が紗栄子にしたことを後悔したし、あのときの自分の行動をやり直せたらと自問自答していた。



自分は決して紗栄子を無視したいわけではなかった。



でも、晴江から紗栄子を無視することを強要されたら、それを断る勇気はなかった。



「なぁ、梨華。

オレたちはとんでもないゲームに巻き込まれちまったけど、絶対にこのゲームを二人でクリアしような。

日の出までこの教室の隅で隠れていよう。

紗栄子がここに来ないと信じて」



暗い1年4組の教室の隅で宏和が優しくそう言ったとき、梨華は不安をいっぱい抱えながら、宏和の大きな体に寄り添った。



一人では抱えきれない大きな不安も宏和がそばにいてくれたら、絶対に解決作が見つかりそうな気がしてくる。



もしも宏和と一緒にいられるこの時間が、デスゲームが行われている学園の中でなければ、自分はきっと今の時間に幸せを感じているはずなのに……。



早く夜が明ければいいと思う。



日の出と共に自分たちの不安と恐怖は消えてしまうはずだから。



梨華がそんなことを思いながら、肩の力を抜いたとき、ベランダ側の窓に無数の赤い光が並んでいるのに梨華は気づいた。



梨華はその赤い光にゾッとしながら、その赤い光の正体を知りたくて、それをじっと見つめた。