この席は男子生徒が使っているのだけれど、今教室内にその生徒の姿はなかった。


「うん……」


短く返事をして再び窓の外へと視線を向ける。


今日はとてもいい天気で、空には雲ひとつない。


「こんなに晴れやかな日に悩みなんてあるの?」


「天気と悩みは関係ないでしょ」


真由子はようやく笑みを浮かべて言った。


「で? なにをそんなに悩んでるの?」


受験のことだろうか?


たしか真由子は県内でも有名な大学へ進学を希望していたはずだ。


「真由子の成績なら問題ないと思うけど」


真由子からの返事を待たずに、あたしは呟いた。


すると真由子は大きく目を開き、そして左右に首を振った。


「進学のことじゃないよ」


「じゃ、なに?」


今の時期の悩みといえば、進学、就職、そして残るひとつは……。


「好きな人がいるんだよね」


真由子の言葉にあたしは大きく息を吐きだした。


残るひとつの悩みだったみたいだ。