部屋から智樹がいなくなったことに気が付けば、千恵美は大慌てだろう。


あたしが智樹を解放したと、すぐに気が付くかもしれない。


でも、そうなる前にあたしは手を打ってあった。


千恵美がしたことを他言しない。


その代わり、智樹が1人で逃げ出したことにしてほしいと、千恵美の母親に言ったのだ。


千恵美がいない間に千恵美の部屋から1人の男が逃げ出した。


ただ、それだけで千恵美にとっては理解できる説明のはずだった。


「千恵美、今日は学校に来てないな」


智樹に言われてあたしは頷いた。


智樹を探すために登校して来るかと思ったが、千恵美の姿はなかった。


といっても、あたしたちも授業を受ける気はなかった。


武も登校してきていないのを確認すると、すぐに学校を出た。


「家は大丈夫なのか?」


学校から離れたファミレスに到着すると、智樹がそう聞いて来た。