どうして私の着替えが早いと決めつけるのか。
若干失礼な気はしつつも、外れてはいないため苦笑いだけ浮かべた。
たしかに、会社の更衣室で鏡とにらめっこして時間を大量に消費している人もいるけれど、ほとんどの女性社員は着替えるだけだ。私も例外ではない。
デスクの上を片付け、部長に日誌を提出して部署を出る。
それから着替えを済ませて会社を出ると、フリースペースに置かれたベンチに座る白坂くんが見えた。
こうして距離を置いて眺めると、背格好が芝浦に似ている。……いや、芝浦のほうがもう少しがっしりしてるかな。白坂くんは本当に男としてはけしからんほどに細いから。
「あのー、おひとりですか?」
OLらしき女性ふたり組に話しかけられている様子を見て、思わず足を止める。
あの女性がうちの社員だった場合、待ち合わせて一緒に帰っていることを知られたらまずいという頭が働いたからだ。
同じ会社に勤めていても、関わらない部署のひとの顔を全員覚えているわけじゃないし、私服になれば余計にわからなくなる。
あのふたりがどうかも、まったくわからなかった。
また失礼な断り方をするかもしれない……と不安にはなったものの、放っておく。
これが仕事中なら円満に終わらせるために割り込んでいくかもしれないけれど、今はプライベートだ。私には関係ないし、ここで割り込んでいったって白坂くんからしたらいいお節介だ。
だから遠巻きに眺めていると、白坂くんはにこりともせずに何かを淡々と一方的に話す。
少し粘っていたふたり組も、白坂くんのあまりの冷たさに諦めたのか、駅の方面に歩いていく。
その様子を確認してから近づくと、気づいた白坂くんが立ち上がった。



