図書室へ戻っても気分はすぐれないままだった。


「千穂、顔色悪いけど大丈夫?」


心配した敦美がそう声をかけてきて、あめ玉を1つくれた。


「ありがとう……」


食欲はなかったけれど、オレンジの飴を口の中に入れてみると心が落ち着く気がした。


「みんなピリピリしてきたよね」


そう言われて周囲に視線を向けると、落ち着かない様子で歩きまわる生徒や、ため息を口返す生徒の姿が多かった。


みんな、ストレスがたまっているのだ。


「仕方ないよ、こんな状態なんだもん……」


アキホちゃんのことはみんなには知らせない方がよさそうだ。


「ユーキからの連絡は?」


そう聞かれて、あたしは左右に首を振った。


「こっちの気も知らないで……」


敦美は苛立ったようにそう呟き、舌打ちをした。