お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。


「ロザリンドさんは明日から令嬢教育をするから。覚悟してね」

「え?」

ケイティはロザリーに満面の笑みを見せると、次はクロエに鋭い眼光を向ける。

「あなたもよ。この際だから教育し直しましょう」

「ええー? 嫌よ。私は別に夜会にだってちゃんと行っているじゃない」

「行っているだけでしょう。本気で結婚相手を見つけなさい。声をかけてもらえるのなんて今だけよ? あっという間に若い子にとって代わられるんですからね!」

妙に実のこもった言い方にロザリーは圧倒されたが、クロエのほうは全然だ。聞いているのか聞いていないのか、平たんな顔でやり過ごした後は、ポンと両手を重ねて美しい微笑みを見せる。

「そうなったら、この屋敷でずっとお兄様と過ごすのもいいですわね!」

「あなたたちは実の兄妹ですよ! ケネスだっていつまでも独身ではないんですからね。ねぇケネス」

「だといいですけどねぇ。あはは」

なにを言っても張り合いのない子供たちに、ケイティはほとほと嫌気がさしたようにため息をつき、気を取り直したようにロザリーを見つめた。

「絶対に、あなたを好きな人と結ばせて見せるわ! ええ、絶対よ!」

「あ、ありがとうございます」

半泣きのケイティに、過剰な熱意を向けられて、さすがのロザリーも引きつった笑いにならざるを得なかった。