朝は雲1つ無い空だったけれど、今は雲が出てきているのがわかった。


それでも、晴れていることに変わりない。


「飲み終わったら観覧車でも乗るか」


「そうだね」


本当は観覧車から夜景を見下ろすと綺麗なんだろうけれど、そこまで待っていると遅くなってしまう。


昼間の観覧車から見える景色でも、きっと綺麗だろう。


「そういえば、最近明日香と連絡取ってるか?」


そう聞かれて、あたしは自分の顔から笑顔が消えて行くのを感じた。


健太郎の顔が、一瞬にして明日香の顔に切り替わって見える。


「……なんで?」


「なんでって、無断で学校を休んでるんだろ? 気にならないのか?」


そう聞かれて、あたしは左右に首を振った。


「別に、気にならない」


そう言うと、明日香の顔をした健太郎が、呆れたような笑顔を浮かべた。


「なんだよ、同じ文芸部なのに白状だなぁ」


そう言ってあたしの頭に手を伸ばす健太郎。


あたしは咄嗟にその手を払いのけていた。


驚いた明日香の顔が、ゆっくりと健太郎に戻って行く。