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レイリル王国には、新緑がまぶしい季節が訪れていた。
教会の鐘の音が高らかに響き渡り、美しい花嫁を見ようと、城下町の人々は大聖堂から城までの沿道を埋め尽くすように集まっていた。
本日は、レイリル王国第一王子ローガンとブラッドリー侯爵家の次女ベリルの結婚式である。

最初、彼らの婚約が発表されたときには、衝撃が走ったものだ。
ローガンは、それより前に、ベリルの姉であるシンディと婚約していたはずだし、ベリルの婚約者だったアシュリー伯爵家のヒューゴも少し前に宝石盗難事件の犯人として逮捕されたことが大きな話題となっていたから。

ローガンの側近であるコネリーが、横恋慕してシンディを奪ったとか、コネリーの想いを叶えるためにローガンが身を引いたとか、実は捜査に参加していたローガンが話を聞いているうちにベリルを見初めたとか、いろいろな噂が広まったが、やがて収束していった。
それは、当事者であるローガンとベリル、そしてコネリーとシンディがともに幸せそうだったからだ。

当初反対していたと噂される王妃も、一時様子がおかしかったローガン王子が、ベリル嬢を紹介してきたその日から落ち着いた様子なのを見て、やがて態度を軟化していったと言われている。

そして、この良き日を迎えたのだ。

「ではローガン様、ベリル様、ふたり手を合わせて、誓いの言葉を」

「はい」

現在、あのエメラルドは大聖堂に収められている。禍々しさが消えた建国の証の宝玉は、しかるべき場所に安置されるのがいいだろうというローガンの配慮だ。
その大聖堂で、ふたりは永遠の愛を誓う。

「病めるときも、健やかなるときも、ともに生きることを誓います。そしてこの国の未来に、この身を尽くすことを誓います」

ふたりの声は重なり合い、ステンドグラスから差し込む光の中へ溶けていく。

これが、のちに賢王と謳われたローガン国王と人々のすべての民の聖母と言われた奥方の、はじまりの日である。

【Fin.】