エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~

「今日は何かありましたの?」

「今日の話ではなく、昨日あなた方を抜きでなされた、私とローガン様とブラッドリー侯爵との会談について、ご報告しておくことがあってきました。今はひとりですか? 口の堅そうな侍女を呼びましょうか」

男性と未婚の女性がふたりきりになることは変な噂の種になる。それを回避するため、侍女を同席させようとしているのだろう。

「不埒なことをなさるおつもり?」

冗談のつもりで言えば、「そうですね。状況によっては」などと笑えない答えが返ってきた。

「マーサ、廊下で控えていてくれ。大きな物音がしたら、すぐに入ってくるように」

結局彼は、侍女をひとり廊下に立たせ、自分一人が入ってきた。扉はかっちり閉めず、拳一つ分くらいの隙間を開けている。

「で、なんのお話?」

「あなたとローガン様の婚約破棄の話です。昨日、ブラッドリー侯爵をお呼びして、ローガン様と私とで話し合いました」

シンディは続きを待った。コネリーは口もとに笑みを浮かべて、続ける。

「シンディ様が最初に妃選びの夜会に来たとき、ダンスを踊ったのは私とです」

そのときは中身がベリルだったので、シンディは初耳だ。「まあ、そうでしたの」となぜいきなりそんな前の話をと思いながら相槌を打つ。