その翌日のことだ。
汗だくのオードリーが、泣きじゃくるクリスを引きずるようにして入ってきた。

「どうした、オードリー」

ただならぬ様子に、レイモンドは調理の手を止めて駆け寄る。

「探しものが得意っていう子がいたわよね? お願い、探してほしいものがあるの」

「落ち着けよ。まずは座って……。クリス、大丈夫か? 泣かなくていいんだぞ?」

レイモンドはオードリーを近くの椅子に座らせ、泣きじゃくったまま母親の服を掴んでいるクリスを抱き上げた。

「レイィ」

レイモンドの首に腕を巻きつけるようにして、クリスは必死に泣き止もうと鼻をすすっている。
食事を楽しんでいたケネスとザックも思わず黙って彼女たちを見つめた。

「どういうことなんだか説明しろよ。……おい、ロザリーはどこだ? 一緒に話を聞いてくれ」

「は、はい!」

掃除をしていたロザリーは、慌てて駆けつけ、クリスが顔を涙まみれにしているのを見て思わず手を伸ばした。

「大丈夫ですか、クリスさん」

「ロザリーちゃぁん。えっ、うえっ」

クリスはレイモンドに抱きかかえられたままロザリーへと手を伸ばした。
その掌にはこすったような擦り傷があり、うっすら血が出ている。

ロザリーはレイモンドから彼女を受け取り、ギュッと抱きしめる。
それを、オードリーは疲れたようにため息をついて見つめた。