こうして、ロザリーの失せもの探しは、【切り株亭】のちょっとした名物となっていった。
三日に一度くらいは物を失くした人がやってきて、ロザリーが嗅覚を駆使して見つける。
お礼は【切り株亭】の宣伝だ。それだけじゃ申し訳ない、と食事をしに来てくれた人たちは、レイモンドの料理に魅了され常連になりつつある。

レイモンドもチェルシーもランディも、素直なロザリーを気に入っていた。
動きは鈍重ではあるが、一生懸命でまじめだ。働くことへの意欲もある。
最初こそ失敗も多かったが、やがて仕事を覚えてくるとミスも減ってきた。
焦げそうになった匂いをいち早くかぎつけ、三十人分の食事を救ってくれたこともある。

特に、唯一の女性仲間であるチェルシーとは仲良くなった。
一日の仕事の終わり、ふたりは一緒に温泉につかることもたびたびだ。
風呂場では裸になるせいか、いつもよりも踏み込んだ話になってしまう。

「ロザリー、住む部屋、見つかった?」

「まだです。とりあえず、見つかるまではお給料から宿代を抜いてもらうことにしました」

「私の家に部屋が余っていればよかったんだけど」

チェルシーは両親と弟と暮らしている。弟は王城勤めの官吏になる試験のために、勉強中なのだという。