家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました


「そうです」

思い切り首を縦に振って肯定してくるロザリーに、ザックは苦笑する。

「やれやれ。ただ危なっかしいだけじゃなくてお人よしか。こんなもん、放っておけってほうが無理だろう」

「え?」

「いや。……たしかに俺はこの帽子をご婦人に会う前に見つけていたよ。だけど、これがあの女性のものかどうかは、君に確かめてもらわなければわからないことだったんだ。だから、これは君が見つけたのと同じってこと。……これでどうだ?」

「屁理屈です」

「屁理屈で結構。早くこれを持っていってやればいい。君がしたいのは、失せものを見つけて人を喜ばせることだろう? ここで俺と言い合いしていたら、それは遅くなるだけだ」

「あっ」

それもそうだ。言い合いなんて後でもできる。まずはこれを届けてあげなくちゃ。

「と、とにかくこれ、届けてきます」

ロザリーはぱたぱた走りながら、切り株亭まで戻る。
ご婦人は、食堂でお茶を飲みながら待っていた様子だが、ロザリーが手に持っている帽子を見ると満面の笑みで立ち上がった。

「それよ! すごいわ、あなた。もう見つけてくれたのね?」

「いえ、その。これはザックさんが」

「ありがとう! 何かお礼させてちょうだい」

しかしロザリーの説明を聞く気などないように、夫人はまくし立て、ロザリーに喜びを訴える。

「お礼なんて……」

「いりませんよ。良かったら【切り株亭】をひいきにしてください。この通り、宿屋の客じゃなくとも食事もとれますから。あと、失せもの探しの令嬢がいる、という宣伝をしていただければ十分です」

続きを口にしたのは、追ってきたザックだ。